容赦なきシュタゲの世界
もしもコロナに罹患したら、病床で何を思うだろう?
そう想像したとき、
「たぶん、シュタインズ・ゲートをクリアしなかったことを後悔するだろうな」
と思い、奮起して全クリをしたゲームのノベライズ版です。
奮起しなければならなかったのは、このゲーム、とことん容赦のない展開の連続で、チキンにはつらい。
しかし、主人公の岡部倫太郎ことオカリンが頑張っているので、そうだ、負けちゃいけないんだ、と自分を励ましてなんとか先に進んでいました。
よく、エンタメのセオリーとして、主人公にラクをさせちゃいけない、というのがあります。
これはそのセオリーを見事に活かしている好例で、これほど次から次へと! という怒涛の展開を見せる物語は、なかなか少ないように感じます。
それがしかも、わざとらしくないんですよ。
伏線の張り方も見事なら、キャラクター造形も(変わり者だらけだけど)いい。
しかもすさまじい緊張感で、思いもかけないところへ連れていかれる快感もある。
それがラストまでつづくのだから、見事としか言いようがありません。
ヒロイン・牧瀬紅莉栖の物語
今回の小説版は、ヒロインの牧瀬紅莉栖の視点で展開します。
ただ、万人におすすめできないのは、しょっぱなゲーム&アニメ版の重要なネタバレがあること。
しかし、ゲーム&アニメをすでにプレイ&視聴した、という方なら、とっても楽しめる小説です。
まちがっても、こっちから読んではいけません……!
ほんとうに、お願いしたくなるレベル。
ゲームから入るか、アニメから入るかして、すべてクリアする、あるいは視聴したあと、小説を読むべし!
ちなみに、牧瀬紅莉栖は弱冠18歳にしてサイエンス誌に論文が掲載されたという天才少女。
とはいえ、鼻持ちならない才女というわけではなく、いろいろとお茶目なところのある女の子です。
ある意味、健気な女の子でもある。
秋葉原という街が舞台のこの物語のヒロインにふさわしい少女でして、オカリンを助けて行動していくその頼もしさたるや。
小説ならではのよさ
この小説では、紅莉栖の心情が丹念に表現されていて、面白いんですよ。
あ、このシーンで紅莉栖はこう思っていたのだな、という発見があったり、
意外に早くに岡部のことを見抜いていたのだな、とおどろいたり、
まゆりやダルについても、かなり肯定的に観察していたのだな、とわかったり、
ともかくすべてが新鮮。
すでに物語を知っているはずのシュタインズ・ゲートを、あらたに発見している感じです。
まだ1巻目。全7巻あるという、うれしさよ!
じっくり読みます♪
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